魚、貝類の仕入れについて飲食店経営者が知っておきたい事

魚や貝類の仕入れをする際、ほとんどの飲食店では卸売業者から魚や貝などを仕入れることになります。最近では産地直送を謳い、漁師と直接ホットラインを結び、魚や貝などを手に入れるケースも増えています。この際に知っておきたいことは、従来のルートであればどのような人たちの手を介して魚や貝が飲食店まで届くのかということであり、それを知ることで産地直送のメリットなどを考えてルートを考えることができるようになります。

まず、漁師が魚などを獲り、水揚げを行います。その後、漁師から魚を買い付ける業者が現れ、それを水揚げした港で販売することになります。この業者を浜仲買商と言います。そして、その港の卸売市場から築地の卸会社へ販売され、築地の卸売市場へと行き、そこから仲卸商へ売られていきます。仲卸商は築地市場内に店舗を構えており、鮮魚小売商に販売することもあれば、直接飲食店に販売することもあります。そして、鮮魚小売商から飲食店へと魚がわたり、仕入れが完了します。漁師が魚を獲り、そこから飲食店のもとに行くまでに相当な数の人の存在があることがわかるだけでなく、その過程で魚の値段がどんどん上がっていくことがよくわかります。飲食業界では従来のルートから一部を介さない形で取引を行う中抜きという手法が取られがちです。この場合でも中抜きという手法をとれば、いくらか安く魚や貝などを仕入れることができそうです。特に産地直送を考える場合、その間の業者のマージンがかからず、それでいて鮮度のいいものを手にすることができることから、何としてでもそうしたいところです。

しかし、簡単に中抜きができるわけではありません。産地直送を可能にさせるポイントとしては、魚をどのように輸送させるのかという部分です。漁師の仕事は水揚げまでで終わることがほとんどです。もちろん、船の上で選別することはあるにしても、細かく判断することはあまりありません。選別の作業は浜仲買商が行います。産地直送をするとなると、漁師が行うことになるため、その手間賃などを確実に通常の原価に上乗せし、販売してくることになります。要するに、産地直送をコスト削減のためにやろうとすると場合によっては市場価格とそこまで変わらないことも考えられます。一見すると多くの業者が介在しているからコストがかかるのではないかと考えがちですが、実際はそうとも言い切れません。これは鮮魚が日持ちしないということがあるためです。日持ちをするもの、賞味期限などの期間があるものは長いスパンでやっていけばいいため、介在すればするほど価格は上がっていきます。しかし、魚や貝類は日持ちはしません。ということは、早く処分しないと傷んでしまい流通させることができなくなります。なにも売らずに終わってしまえばその分損をすることから、ならば少しでも安く売って処分しようという心理が働き、色んな業者を介する過程で値段が下がっていくことも十分にあります。これが産地直送だと原価より確実に上乗せがなされるため、原価を割ることはまずありません。

こうしたことから、仕入れを行う際、価格ありきで考えるのか、それとも鮮度を最優先するのか、そのいずれかで考えたほうがよさそうです。また、人によっては漁港で購入したほうが安いのではないかと考える人もいます。しかし、漁港の場合は獲れた時期と商品価値を最優先するため、そこまで安く売られてはいません。一方、中央市場などで販売されている場合には消費者の考え方が考慮されるため、そんなに高く売るということもありません。もし価格だけで考えた場合、漁師とホットラインを結んで魚を取り寄せたとしてもコスト削減にはつながりません。むしろ中央市場に赴いて購入していった方が安上がりとなります。産地直送を利用するのであれば、鮮度を確保する、ブランドを手にすることを重点的に考えた方がよさそうです。この場合におけるブランドというのは、うちの店では魚が産地直送なので鮮度が抜群ですという安心感の意味合いで使われ、消費者が安心する材料となります。近年、スーパーでも産地直送を前面に押し出した戦略が行われていますが、それは飲食店でも同じことです。鮮度にこだわりたいのであれば明らかに産地直送がベストです。

魚や貝類をどのように確保するかは、その飲食店が求めているクオリティによります。高級寿司店などでは信頼している業者にすべてを任せているケースがほとんどであり、産地直送はあまりしません。家族連れなど食の安全にこだわりを持つ人が多く利用するような飲食店の場合には産地直送というのも1つの手であり、考えておきたいやり方です。安く確保したいのか、それとも鮮度にこだわるのか、はたまたプロの目利きに信用してすべてを任せるのか、飲食店の種類、性格などを十分に考慮した上で、どのようなルートで確保していくのか考えておきたいところです。